5月  花・花・花・花・花いっぱい
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Flower breeze
ドイツ



「ヨーロッパの春」




春風が吹くと、野原は賑やか。

野の花が、次々に歌い出す。

花の歌声は風に乗り、

薫風は鳥たちを、虫たちを、招待する。

人たちも招かれて、野に遊ぶ。
この季節にヨーロッパの田舎(ドイツのバイエルンやスイス・オーストリーのチロル地方など)を巡っていると、なんともいえない「しあわせ感」に包まれます。
花々が吹き出すように、野原一面に咲くのです。
わが家でもあるキャンピングカーにとって、花咲く野原はわが庭でもあります。
原っぱのそばに車を止め、テーブルと椅子を出してお茶にしましょう。
テーブルには、お気に入りの花々を少し頂いて飾ります。よい写真が撮れた時のおまじないです。

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Country bouquet
この季節は、

野花を摘んで花束作り。

私のとっておきの楽しみです。
花咲く野原の、忘れられない思い出話し。
1980年 はじめての欧州海外取材の春でした。
チロルの丘は可憐な野花におおわれ、彼方には雪の山々、此方には丸太小屋。
カラーン、コローン、カウベルの音がのんびりと伝わってきます。
私たちは写真撮ったり、絵描いたり、草の上に寝っ転がって浮き雲見たり、花の香楽しんだりと、〈アルプスの少女ハイジ〉気分を満喫していました。
「○△□…!コラーー!」ハイジのやさしいおじいさんならぬスゴイ形相のお方が、なにやら怒鳴りながら駆けて来ました。
「××××!!○△□…!」
「?・・・!!」コトバが通じないながら、よーくわかりました。
私たちはとんでもないことをしていたのです。
「わしの育てた大事な牧草を、めちゃくちゃに踏み荒らしおって!なぎ倒された牧草を刈るのがどんなに大変か、わかっておるのか!ここは大切な牧草地じゃぞ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
無知な私たちでした、、、。日本でたとえるなら、稲穂の実った田圃を掻き回したようなもんでした。
後々に花の野原のこと、その美しさのこと、牧草のことなどわかってきました。
今、野草の花が咲き乱れている丘々は、牧人が手塩にかけた牧草だったのです。
この花々の種が結実する初夏の頃、一番草が刈り取られます。
広い野原はコンバインで、庭先あたりは芝刈り機、急な斜面は草刈り鎌の手で刈られ、お日様に干されて干し草になります。
丸坊主になった丘々からまことにイイニオイが漂ってくることがあります。
バキュームカーが、糞尿をまき散らしていました!家畜たちの排泄物で、二番草を育てるのです。
強い初夏の日射しの中で一気に生え揃う二番草の緑の波は見事です。
そんな作業が秋まで続き、季節や高度差で野原の表情も変わってゆきます。
花の種類色々、秋には一面の草の穂波。
「牧草地につき全面立ち入り禁止」ではありません。
よく見ると野原の中に細い踏みしろがあります。
散歩する人、ピクニックへ出かける人、それぞれ、踏みしろ譲り合って広い春の野歩きを楽しんでいました。
春の丘々は、おしゃれ。

スカートを次々にはき替え、レースのドレスを惜しげもなく脱ぎ捨てる。
鳥たちの合唱にカウベルが参加、虫たちの弦も響いて
華麗なファッションショーと音楽会は、秋まで続きます。
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Bayern hill
ドイツ


はじめて野ウサギに出会ったときは、感動しました。
逃げるときの尻尾の白さが目立ちます。
目立ちすぎて敵にやられやしないかと、はじめは心配でした。
郊外のちょっとした空き地にも棲んでることがわかり、心配ご無用。
それから私はウサギの目になりました。
車の助手席から目を光らせて、道端や畑にいる野ウサギを見つけるのです。
見つけた時は、うれしい!かわいい!でもすばしっこい・・・。
早朝や夕方がお食事時のようです。

ドイツの友人にその話しをすると 野ウサギには今疫病が流行ってるから、決して触らないように、とのことでした。
鶏ウイルスの野鳥説もあったり、野生動物の世界もアレコレ大変なようです。
チロル地方で、ある丘の上から写真を撮ることにしました。
美しい牧草の丘です。
丘の麓にログキャビンの素敵な農家、おじさんに事情を説明し許可を得ました。
「空が真っ青に晴れたら、あなたの美しい丘を手前に入れて、向こうの湖と雪山の写真を撮りたいのです。
丘を登る時は、牧草を踏まないようにはじっこを注意しながら登りますので・・・」
シャッターチャンス日和は、なかなか訪れませんでしたが、毎日その丘へ通いました。
とても気持ちのよいところです。
澄んだ空気、心地よい風、野の花々、優しい目の牛たち、点在している牧草小屋、働き者の農家の人達、その伝統的なコスチュウム。
殿方は、大人も子供もあのチロリアンハットを被ってます。フェルト製で粋な羽根飾りが付いてるヤツ。
両肩吊るしの皮ズボン、胸元にはチロリアンテープの飾り。
女の人はスカーフにエプロン、
長めのスカートには、もちろんチロリアンテープの裾模様。
丸太で組まれたベンチや牛の水飲み場。
十歳くらいの男の子が満足そうにトラクターの助手席に乗ってました。
この仕事、確かに受け継がれてゆくのでしょう。
数日後、よい写真が撮れたお礼とお別れを述べました。
自然の中での仕事に誇りと自信を持ってる人の笑顔がありました。
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Tyrolean hill 
オーストリア


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Pappus
ドイツ
「たんぽぽの綿毛」





たんぽぽ、ぽぽぽ、ぽ、

たんぽぽぽぽ、ぽ―、

ぽ―ぽ―ぽ―、たんぽぽ、ぽ。
ドイツのロマンチック街道を通る時立ち寄る、ちいさな礼拝堂があります。
菜の花が満開の香りを立ててたり、若麦が光ってたり、年によって前に広がる畑が変わります。そしてちいさな礼拝堂の表情も違って見えます。
この年はたんぽぽの綿毛と遊んでいるようでした。
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Popy−field
フランス
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Popy field
フランス
「ひなげし」


ひなげしがゆれて、はなびらをこぼす。

はなびらがこぼれて、種の子が顔を出す。

種の子がしゃっきりと頭を立てて、ツバメの舞を見上げる。

ひなげしの種とツバメたちは、来年の季節を約束しあっている。



ひなげしは、道端や空き地や土手に何気なく咲いて景色に色を添えてます。
たくさんの国々で出会って、思い出もそれぞれ。モンゴルで見つけたレモン色のひなげしは忘れられません。
名高い青いけしにはまだ出会ってませんが、きっと印象的なのでしょうね。
通り掛かりに見つけたフランスのけし畑、妖しい美しさでした。

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Popy−horizon
フランス