2005年 3月 
エーゲ海の風に吹かれて
3月28日より、個展をいたします
2年に一度の「久我通世展」
今回の個展のテーマは ― エーゲ海の風に吹かれて ―

と、いうことで、今回はエーゲ海の風に乗せてギリシャの小島より、
植物のお土産話をお届けします
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Caper
ギリシャ・サントリーニ島
「こんばんは」

ひそやかな夜のあいさつ

土手の暗闇の、そこだけほの白く

野生のケイパーが、微笑んでいる

ギリシャのサントリーニ島では、毎日のように夕陽の美しい岬を訪ねました。
夫が三脚を据え、カメラを構え、夕陽と四つに取り組んでいる側で、私は助手をしつつ、
刻々と変化する入り日の様子に、ただもう、うっとり、、、ぜいたくな時を過ごしていました。
夕陽をめでた後の日暮れた帰り道は、なんとなくサビシイ気分です。

はじめてこの花を見つけた時は、ドキリとしました。
夕闇の中に妖艶でした。
もっとよく見たくて、次の朝行ってみると、全部しぼんでいました。
一夜限りの花でした、月見草のように・・・・。

ますます魅せられて、毎夕、この花の咲く土手へ通いました。
ある日、島の八百屋の店先で、この花のつぼみを発見!
他の野菜と一緒に並んでいたのです。

よく見ると、それはスモークサーモンなどに添えられるケイパーでした。
あの酢漬けは、「実」ではなく「つぼみ」だったのです。

ケイパー = セイヨウフウチョウボク≪地中海沿岸産の灌木≫
ケイパー = フウチョウソウ科の低木の蕾を酢漬けにしたもの

なんと優雅な自然の恵み!
後年訪れたスペインのメノルカ島では、土手一面にこのケイパーの花が咲きほこっていて、
夕食後の散歩の途中、うれしそうに蕾を摘んでいる人たちを見かけました。

この木、ナンの木?

ある日、ある時、なんとなく島をぶらついていて、楽しげな果樹園を発見!
ナンの木だかワカランけどナンダカ楽しげ、潮風心地よく、木の根方では犬がお昼寝。
静かで安心、平和な島の昼下がり。
飛び交う鳥はいるけれど、ダーレもいない昼下がり、シエスタの時間でしょうか?

ソンナ時、手押し車引いてノンビリとおじさんがひとりやって来ました。
ナンダカ楽しげな木のスケッチ見せて、本物の木も指さして、身振り手振りで
「ナンの木?」か訊いてみて、マアー、驚いたコト!

おじさん曰く「ピスターチオ!」だって。

そして、そして、もっとオドロイタこと。手押し車の中身は「ピスターチオ」でありまして、おじさんはナント「ピスターチオ売り」だったのです。

私たちの手作りキャンピングカーにも「ピスタチオ」がありまして、「どうぞ」と勧めてみました。
おじさんは一粒食べて「マズイ、、、」

この島の「ピスターチオ」は世界一さ、と自分のを一握りくれました。
「ウマイ!!」

新鮮な美味しさ、塩味とほのかな酸味と香り。
味も姿も、この島の「ピスターチオ」のトリコになった私たちでした。

素朴な三角の紙に包まれていた「ピスターチオ」と、おじさんとのやりとりが懐かしい、
15年ほど前のお話です。


ピスタチオ

赤い実を花のようにつけて、踊っている木がありました

潮風も、鳥の飛来も、犬の昼寝も

何もかも、

嬉しくてウレシクテたまらない踊り方でした

こんな風な木の実をオツマミにして呑むのだから、

どうりで、お酒はタノシイはずです

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PISTATIO
ギリシャ・サントリーニ島

「植物のお土産話」終わりにあったって

2004年1月から「植物のお土産話」を綴ってきました。
現地でのスケッチをもとにリトグラフ作品を制作、個展で皆様にご高覧頂いてはいるもの、スケッチ以前のお話、作品の裏話なども聞いて頂きたく、お伝えしたくHPの一端を占めることとなりました。

2003年からのページを御笑見下さっている方、友人、知人はご承知ですが、このHPは2002年にアルコール依存症(と鬱病?)を発症、一生断酒の身となった夫が立ち上げてくれたものです。

私は、ただ、不慣れなキーボードをたたいて絵と文を組み合わしているだけ、というナマケモノです。
今回の「植物のお土産話」は私自身が植物の思い出に浸り、木や花々に癒されたいと、取り上げたテーマでした。

マサカ、最後の章が「お酒」で終わろうとは・・・・!!自分でもオドロキです。
が、98%〜99%脱落してしまうという「一生断酒」を事もなく続けている夫に頭が下がります。

次回のテーマは決めてませんが、これからも二人三脚を続けて行きたいと思いますので、

皆様どうぞ、ヨロシクお願いいたします。
追記

先月見送った近しい、親しい若者のことを思い巡らす日々でした。

そのことで、「生きること、生活、時間、空間、関係、、、、ETC」
普段なにも考えず、気づかず通りすぎていた些細なこと、普遍的なことをじっくり考えるようになりました、少し立ち止まって。

今、彼には「ありがとう!!」という言葉を、いっぱい、いっぱい、送りたいと思います。

明るい思い出と共に、山の空気と、潮風に乗せて・・・・。

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