旅のお土産話トップへ戻る   旅のお土産話 vol.1
    
はじめての「お土産話」は2003年・春、今年の個展の内容をお話しします。
 
今までの個展はテーマにそって世界各地を取り上げてきましたが、今回は一カ所だけに的を絞りました。
人生を左右するような事件があり、その後のトラウマ、そして再出発。
今ある私達は、カピンガマランギ環礁、島人のお陰でもあります。
素晴らしいカピンギィ魂や海のお土産話、エピソードなど、少しずつお話ししたいと思います
いつまで続くかな〜。
2003
 The thankful islands 
−ありがとう カピンガマランギ環礁−


< ダブルハンズ クルージング >
2000年の元旦を私達は太平洋上で迎えました。「ジャパン・グアム、ヨットレース」に愛艇「ひなの」で出艇。頼もしい仲間6名と一緒でした。
ヨットレースは途中微風のため仲間の都合を考え泣く泣くリタイヤしたのですが・・・・・これは、その後の航海を象徴しているような出来事でした。 
 
グアムで仲間を見送り一月中旬より、いよいよ二人だけの航海、ダブルハンズ・クルージングを始めました。4時間交替でワッチ(見張り)をし、夜もどちらかが起きているのです。長期航海の時、ヨットレースは別として舵を握ることはほとんどありません。よっぽどの荒天か出入港の時だけで、あとは自動操舵という超便利な仕掛けがあり、方位を合わせておくとヨットは一人で?そこへ向かってくれるのです。HINANOではこのラクチンな仕掛けのことを「らくちゃん」と命名。また風が安定している海域では装置をチョチョット風向きに合わせておくと、電気も燃料も使わず勝手に?目的地へ向かってくれる仕掛けもあります。そういう事はすべて艇長(夫、コーチャン)が取り仕切るので三等クルーの私は「メシの支度」と「見張り」だけしていればいいというお気楽さ。あ、そーでもないか。たまに風が変わると帆を動かしたり、現在地を毎時、海図に書き込んだり、少しはクルーらしいこともやります。が、グアム以南の南洋航海は「ぼう〜っ」とできる時間がいっぱいありました。
とびきり贅沢な時間は「夜」です。
                    
航海日記より

「上弦の月、月光の波、銀色の海の道、ただ一艇走るHINANO、もう最高!これだからナイトクルージングはやめられない」
「叫びたくなるような星の夜、天の川のはずれに南十字星。長い尾を引く流れ星。そしてマストの先、行く手に特大級の銀色の星。その星に導かれるように力強く進むHINANO」
               
たったひとり、デッキの上で星空を仰ぐ贅沢。二人で黙って天の川を追い、流れ星の音に耳を澄ますひととき。
星の数が減って、だんだんに空が明るくなる頃、ワッチ当番はコーヒーをたてます。「夜明けのコーヒー」これもまた贅沢。
「おはよう!」日の出と共にどこからか海鳥が飛来します。朝一番の海の仲間との出会い。
「あと五分でワッチ終了、やっと眠れる、、、、」と早々に横になるか、
「お、今日はなんかいいことありそう、もっと起きてようかな」と思うのはその日の天気と気分次第。
ワッチ当番は眠るのも仕事のうちなんです。昼寝もシゴトってこと。
やがて真昼。
太陽が真上になってくると、ワッチの当番でも瞼が重くなってきます。ここで睡魔と戦いつつ策を練ります。
              
<居眠り防止策>
その1,洗濯
 服の中にロープを通してしっかり縛り、海に流すこと小一時間。引き上げてみると、アラ、不思議、薄汚れたTシャツもまっ白に!!以前、高知港でコインランドリーの時間待ちに、潮っぽい飲み屋のノレンをくぐった時のこと。土佐の漁師さんに「カポスの正式な絞り方」と「海の男の洗濯術」を教わった。これがグ−−−です。引き上げて干すこと小一時間、熱い、暑い太陽、そして風・超エコロジーな海上ランドリー。(もちろんお天気次第)
                       
その2,釣り           
 ヨットでの釣りは、これまた簡単。船尾から疑似餌を流すだけ。ケンケンを流すという。
鳥の形をした仕掛け、ケンケンが暴れると獲物ゲットのあかし。それっとばかり太いてぐすを引き上げ大物を頂戴するのです。
ニュジーランドから日本まで回航した時は極太てぐすが疑似餌もろとも食いちぎられ悔しい思い何度も・・・・。ワイヤーロープに替えてからは続々と大物ゲット。その時の極めつけは1,8mのカジキマグロでした。
ワッチ当番は、読書のページからチラッと目を上げケンケンの様子を確かめるだけの、ものぐさ釣りですが、大物が掛かれば大忙し。刺身に酢じめ、煮物に焼き物、干物、冷凍、etc・・・・
色んなメニューで海の幸をあますことなく「いただきま〜す!」
その3,海の仲間たち         
 船影も島影も見えない海原で生き物に出会うとうれしい。ある日グンカンドリが飛来して、スプレッダー(マストについている横棒)に止まりたがり何十回も挑戦。上から、下から、斜めから・・・・。見上げる私たちの首が痛くなってもまだやめない。止まり木で羽を休めたいのではなく、遊んでるようでした。大きなグンカンドリも遊ぶのが好きなんだ。翌日は雄?がやってきてぐるぐる観察して帰っていった。相棒に言われて見物に来たみたい〜。
海の遊び好きはなんといってもイルカさん達です。
イルカは幸せを運ぶという。出会った日は一日中ハッピー気分です。島の近くで出会うことが多く、出入港の水先案内役みたい。
「ようこそ!」「いってらっしゃい!」「またあそびましょ!」
笑いながら全身で伝えているようです。
「ありがとう!」いつの日かイルカちゃん達と思いきり遊べるといいな〜。
島が近ずくとカモメも多くなります。どんな大波が来ようと羽先ギリギリで波頭をかわしてゆく飛翔術はスゴイ。ヨットの帆は鳥の羽からヒントを得たものだとか。<揚力>ウーーーン、ナルホド!???!
その他、海面をぼおーーーっと見ているとサメの三角背びれや、たまに海亀がぷっかり浮いてたり、小さな大発見があることも〜。
 
その4,天気
眠気吹っ飛ぶスコール到来!!南の海にスコールはつきもの。産みの親は入道雲です。ン千m上空に立ち昇った積乱雲の水蒸気が重さに耐えきれず、雨粒となり風を呼び込みながら降ってくるのです。スコール襲来は夜がほとんどですが、午後から夕方の肉眼で見えるスコールは、結構楽しめます。え?スッポンポンでシャワー浴びて、シャンプーもついでにって?チッ、チッ、チ,Oh,NO!それはマンガの理想像デス。実際のスコールは、氷のように冷たく、濡れると歯の根が合わないほど寒いのでした。でもこのスコールの天水が甘露〜!市販されてるどんなミネラルウオーターもかないません。島影一つない大海原の上空で作られた天然水を飲める贅沢。ちょっとくらい寒くったって何のその。それにスコールは逃げ足?が速いのです。
                    
一番にやることは舵取りと風に合わせた帆の調整。それから雨水集め。
スコールが去った後に、虹の置き土産が!洋上から立ち上がる虹を愛でつつ冷たい甘露天水でカンパイ!!ったく贅沢〜&しあわせ〜。
でも夜のスコールは油断大敵。風が変わるとレーダーでチェック、積乱雲は入道雲、別名雷雲。夜の稲妻は迫力です。クワバラ、くわばら・・・・
             
一日のクライマックスはなんといっても夕陽。お天道様にご挨拶しなくっちゃ、と、ワッチオフでも起きてきます。
「また、あしたね〜!!」
刻々と変わる海と空の表情。同じ太陽が沈んでいるのに、ドーシテ?いや、太陽が沈んでるんじゃない、地球が回ってるんです。自転しながら太陽の周りを回る水の惑星、地球。地球の周りを回っている月。その他の惑星、銀河系、宇宙・・・。贅沢な夜の時間が、また巡ってきます。
 
このロングクルージングで、改めて実感したこと。ソレハ「一日って、朝が来て、昼が来て、夜が来る」コトなんだってコト。アッタリマエですが、再認識しました。遮るものナーンニモナイ大海原の真ん中にポツンと浮かんでいると、ちいさな、ちいさな自分の存在と共に、おおきな、おおきな時間の流れの中に組み込まれている感じがありました。
「朝、昼、夜−あさ、ひる、よる−アサ、ヒル、ヨル−朝、昼、夜・・・・・」太陽と星々は、太古の昔からこうやって、時を刻み続けているんですね。
ふ〜〜〜〜ん。水の惑星・地球の「おおきなみずたまり」にいだかれて、まず「いちにち」に感動したのでした。
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