NO,13 帰路を辿る
1983年12月22日〜12月24日
 地図とルートはここをクリックしてください(復路の地図更新しました)
12月22日(木)  大樹バオバブの根方 泊

いよいよ帰路を辿る旅となった第一日目のお宿はここ、
バオバブの根方。

老王者のように立つバオバブにいだかれて眠りにつく夜、
「旅はよきかな」としみじみ思う私たち。

月光の中にバオバブのシルエット、自在な枝々がたくましく浮かび上がっていた。
下記は2004年にアップした
「旅の思い出・樹々や花々」別ウィンドウで開きます
『3月・大樹』よりの抜粋。

乾いた大地に立つバオバブの大樹。

「ああ、この樹に出会うためにここまで来たんだ」

いえ、「バオバブに導かれてここまで辿り着けたんだ」

そんな思いで仰ぎ見、幹のまわりを巡りました。
198517(480mm×370mm)
BAOBABU
マリ共和国
「よく来た、よく来た。ここはお休み処だよ」
サハラを超えた私たちを、バオバブの樹が迎えてくれました。大きく広げた腕の中で安心しました。
笑顔の集いがありました。
ありがとう!バオバブ。

来るときに出会ったバオバブの根方に一宿できる幸せ。

「行き」に見たヒエ、アワ脱穀をしていた部落に女たちの姿はなく、からっぽの臼がそこらに転がってただけ、、、。
キビを収穫する男たちがちらほら。
穀物の実りには「時期」があるのだ、というアタリマエを実感しつつ、ちょっぴりガッカリしつつ、ひた走る。

夕刻、夕陽とバオバブを背景にした部落では臼と杵が活躍していた。
働く女たちに再び見惚れる。

子供たちの笑顔もあった。

私たちは今朝、首都バマコのホテルを発ってきたのだ。

冷房で冷え切ったフィルムバッグをブル君の所定位置に納め、
部屋に運び込んでいた炊事用品や山のような洗濯物も片付け、
熱風受けつつ懐かしい帰路を辿っている。

途中、あまりの暑さにデカ長スイカを求め昼食代わりにかぶりついた。

暑さの贈り物、超美味!

たくましいバオバブの枝にぶら下がって、ヘチマのようにユーモラスに揺れているバオバブの実。
この実もウマイのだと、少年たちが教えてくれた。
どんなお味なんでしょうか?

12月23日(金)  KORIーKORI 〜 Bandiagara のブッシュの中 泊

朝早くから子供たちが見物にやって来た。

「ナンとかカドウー」「カンとかカドウー」を口々に連呼。

「カドウー」はインドの「バクシーシ」に似ている。
つまり、「なんかくれー」ってこと。
買い物をしてオマケをつけてくれることも「カドウー」という。
真剣カドウー、言ってみるだけカドウー、遊び半分カドウー、色々ある。
インドの「バクシーシ」ほどしつこくなく、性急ではない。
のんびりとしている。

ま、この子らは遊び半分カドウーのようだ。

バオバブや子供たちに別れを告げ、少し走る。

無人(と思われる)ブッシュ地帯でひと休み。
静かな深い青空見上げつつ、至福のスイカタイム。
・・・・と、向こうで何やら物音が!

藪をかきわけ音のする方へ・・・。
枯れた倒木を手斧で切り倒しているおじいさんがいた。

炎天下、額に汗して大変な作業だが、目は涼しげに笑っている。
倒木からカブトムシの幼虫みたいなデカイヤツが出てきた。
「旨い」もんらしい。

おじいさんの知ってる外国語は「メルシー」と「ボン」
このふたことで会話し、「メルシー」と言って別れた。

おじいさんの写真がないので、新たに発見した
「蟻塚とコーチャン」を代わりに。
(NO,10ー12月15日に登場させたかった写真)

マリ共和国第二の都会モプテイで、砂脱出鉄板を買い足すことにした。
198929(390mm×220mm)
MOPTI
マリ共和国
開店時間を待つ間にニジェール河畔の「夢のような光景」を再び楽しむ。

黒光りする豊かなオッパイをあらわにし、洗濯に精を出す明るい女たち。

彼女たちは膝を曲げてかがむということをしない。
背中を丸めるということもしない。

しなやかな肢体、長い手足、くびれたウエスト・・・ため息の出る健康美!

女たちが洗濯するそばで、男たちが網を引く。そのそばで子らが遊ぶ。川面を舟が静かにすべってゆく。
河は暮らしを包括してゆったりと流れていた。

鉄板を手に入れSANHGA(サンガ)への道を辿る。
サンガの家々は独特な土作り、ドゴン族の村の中心地とか。

夕陽の中、女たちが頭に物を乗せ三々五々帰路につく姿が印象的だった。

今夜の泊地はブッシュの中。
私に風邪の順番が回ってきたようだ。

12月24日(土) MOPTI  KANAGA Hotel

サンガまでの道は落石現場さながらのひどさ。
岩山に発破を掛け、その後ショベルカーでかき回したような具合。
ブル君はロデオのように、跳んだりはねたり、階段状の岩山道を勇敢!?に進んで行った。
(四駆でもないブル君でこんな道を走るなんて、今思うとかなりキケン、冷や汗、、。)

いよいよドゴン族の部落が近い。
丸々裸ん坊、黒ン坊の子供たちが駆け寄って来る。
「サバ、ボンボン!」「サバ、ボンボン!」
この子たちにキャンデイをあげる観光客がいるのだ。
私たちは、「理由」なしにはあげないよ!
必死で岩道を駆け上がろうと、あがくブル君。
岩山を黒豹のように疾走し、ついてくる子らは精悍でさえある。
黒ン坊だった子が土埃を全身に浴びて土色に変身。
土の人、土から生まれた子、まさに「土人」である。

サンガの村は大きく、土産物売りが大人子供入り交じって多く、はじめのうちはウルサク感じた。
全員断り続け、6才くらいの男の子がひとり残った。
知ってる限りのフランス語と英語をごちゃ混ぜにしてしゃべりまくる彼の旺盛な生活力に圧倒され、最後にアメ玉ひとつあげた。
マイッタ、脱帽!

滑らかな土づくりの家々。
ドゴン族は、神話の伝統を受け継いだ暮らしを今なお続けているという。
土壁にほどこされた魅力的な文様は単なる装飾ではない。
たとえばトカゲ文様は「生命力」を表すとか。
屋根のカタチでも「男」「女」の倉庫が区別されていたり。

重厚な木の扉には、祈り文様か、神話世界が刻まれていた。

その重々しい木扉から覗いた土蔵の中はなんと、真水が満水。
その中で「魚」を飼っているのだと。
亀も飼っているらしい。


台所らしき扉にも先祖神とトカゲの文様が刻まれ黒光りしていた。
川のそばには畑があり、野菜が栽培されていた。
石で50cm四方くらいのマス目を作り、土を入れヒョウタンで水を撒いていた。
土の家の屋上にはアカシアの豆、アワ、ヒエ、バオバブの実などが干してあった。
バオバブの実は「酢ッぱ旨」って感じのお味。

198707(300mm×200mm)
Dogonーvillage
マリ共和国

ドゴン族の村、サンガは第一印象よりはるかに素晴らしく、

その独自の生活観に感銘を受けた。
今夜はクリスマスイヴ。
独自の宗教観持ち合わせない私たちは、ホテルのレストランでデイナーをとる。

私は風邪、コーチャンもぐったり。