同じヤシ科でも砂漠のオアシスを潤すナツメヤシの生い立ちにはキビシーものがあります。
話が海辺から砂漠に飛びますが、サハラ砂漠は、そのあまりの広さに「砂の海」とも呼ばれています。
砂の海に浮かぶ小島が「オアシス」。
熱砂の砂漠で人が住めるのはオアシスだけです。
オアシスにはナツメヤシの群生が濃い影を落とし、影の下には菜園さえ作られ、樹上では鳥たちがさえずり、くつろぎと安らぎを与えてくれます。
オアシスのナツメヤシは勝手に殖え育つのではないのです。
まず、スリバチ状の大きな深い穴を掘り、(掘っても掘っても砂だから、スリバチ状でなければ埋まってしまう・・・)
一番底に小さな苗を植え、スリバチのヘリにはナツメヤシの大きな枯れ葉で防砂用の垣根をめぐらします。
小さな苗は穴の底で、砂嵐と、熱射と、渇きに抵抗しながら成長を待つのです。
大きなスリバチの底で枯れ果てた苗を何本も目撃し、ナツメヤシの成長が容易でないことを知りました。
こうやって育てられ繁ったナツメヤシが群落をなし、オアシスとなるのです。
オアシスの一員となったナツメヤシは、木陰の潤いと共に滋養たっぷりの甘いあま〜いナツメの実を、どっさり提供してくれます。
砂の海に浮かぶ小島、オアシスは、砂漠の民の汗の結晶です。 |